Elijah

落下の解剖学のElijahのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.8
何の予備知識も入れずの終映間近の駆け込み劇場鑑賞。
想像していたことの顛末とは違っていたけれど、それでも十分な見応えがあり上映時間152分を長く感じることはなかった(寧ろ無我夢中で鑑賞したので時間の流れが速かった)。
始終、会話劇に徹しているので鑑賞後は分厚い一冊の小説を全集中し読み終わった気持ちに駆られる。
妻サンドラを信じるか/信じないかでこの作品の見解が変わってくるのではないだろうか。
そのサンドラを演じたザンドラ・ヒュラーの演技が巧妙で正に当たり役と思えるほど。
英語を話すスワン・アルロー(ヴァンサン役)が新鮮で容姿と役柄の渋さも含め素敵だった。
お目当てのアントワーヌ・レナルツが辛辣な検事役を嫌味に演じていたことも愉しく。
そして、真の主人公とも思える息子ダニエルを演じたミロ・マシャド・グラネールがとても素晴らしかった。
着地点はフランス映画らしい問題提起するような落としどころで、「罪」ではなく「真実」の判断は観客に委ねられる形になっていたと感じる。
また、人は人の多方面ではなく一部分しか知り得ていないことがあるのだと再認する。

2024/04/30鑑賞
Elijah

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