近本光司

枯れ葉の近本光司のレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.0
業務用スーパーの品出し。工事のあいまに喫む煙草。通勤バスの座席配置。ラジオが伝えるウクライナ戦争の戦況。カラオケバーで出会った男女が埋めあう孤独。二人で連れ立って観に行く映画はジャームッシュのゾンビ映画であった。取り立てて特徴をもたないヘルシンキの街角で繰り広げられたラブストーリーは、二十一世紀の世界じゅうのどの町を舞台にしていたってかまわなかっただろう。もっともありきたりな結末が用意されていたことにも不思議はない。わたしたちは、たとえどの町の、どんな映画館であっても、多かれ少なかれ、この映画の描く現代人の孤独に感染させられることだろう。わたしは身体のうちで醸成された孤独を外の世界に馴染ませていくように、映画館から夜の町を一時間ほど歩いて帰った。といいつつ、あんまおもしろくなくて、いつものカウリスマキといえばそうなのだが、潔く『希望のかなた』で引退しておけばよかったのにと意地悪な感想をもったのだった。