カウリスマキが戻ってきた。
我々に伝えなければならないことが、まだまだあるらしい。
彼は今、冷たい時代にふらっと現れ、愛を説くだけ説いたら再び天に還ってゆく、ちょっとしたキリストのような存在になりつつある。
我々の住むこの世界においては、彼の不在こそが愛の証左なのではなかろうか。
そして、そんな彼が戻ってきてしまった。
繰り返される無意味な争いが、彼の眠りを妨げてしまった。
しかしながら彼は今でも人間を諦めてなどいない。
この期に及んでまだ、人の弱さを認めようとする。
彼は愚かな人間に慈愛の眼差しを向け、ウィンクのサービスまで施してくれるのだ。
我々としても、いつまでもこの愛に甘えてばかりいられないはずだ。
彼のラジオから、彼の好きな音楽だけが流れる世界を願って。