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枯れ葉のMALPASOのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.9
映画『枯れ葉』

アキ・カウリスマキが引退宣言を撤回して撮った傑作。
恋人も家族もいない中年男女のオフビートなラブ・ストーリー。
舞台は現代のフィンランド・ヘルシンキ。ラジオから流れるのは、ロシアのウクライナ侵攻のニュース。

2人のすれ違い具合がたまらん!
2人が映画館で観るのが、友人ジャームッシュ監督の『デッド・ドント・ダイ』だった。
『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』と続いた労働者3部作に連なる4作目。オフビートな笑いの中に、過酷な社会の中で生きる人たちが描かれる。どれも傑作だったけど、その中でも一番の傑作かもしれない。

主役の2人を演じるのは、『TOVE トーベ』でトーベ・ヤンソン演じたアルマ・ポウスティと、がアンサ、『アンノウン・ソルジャー英雄なき戦場』のユッシ・バタネンの名優どうし。

いつものアキ・カウリスマキ・ワールド。シーン毎のアクセントとなる色、隣り合わせの座り位置。
興味深いのはアキ監督の演技演出。今回は35㎜フィルムで撮影した作品。撮影はほぼワンテイクだったという。役者に出した指示は、台詞は覚えて来い、でも練習はするな、一人ではするな、二人でもするな。
とにかく、アキ・カウリスマキにしか作れない世界が素敵!

今回も音楽が素晴らしい!バーのシーンで歌っている女性デュオが気になって調べたら、フィンランドのマウステテュトットというバンドだった。

ー監督の言葉が気になったので、公式サイトからそのまま引用。

取るに足らないバイオレンス映画を作っては自分の評価を怪しくしてきた私ですが、無意味でバカげた犯罪である戦争の全てに嫌気がさして、ついに人類に未来をもたらすかもしれないテーマ、すなわち愛を求める心、連帯、希望、そして他人や自然といった全ての生きるものと死んだものへの敬意、そんなことを物語として描くことにしました。それこそが語るに足るものだという前提で。
この映画では、我が家の神様、ブレッソン、小津、チャップリンへ、私のいささか小さな帽子を脱いでささやかな敬意を捧げてみました。しかしそれが無残にも失敗したのは全てが私の責任です。

アキ・カウリスマキ
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