湯っ子

枯れ葉の湯っ子のレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.0
おかえりなさいのカウリスマキ。
ウクライナやパレスチナや、他にも世界中で起こっている戦争があって、日常的にそのニュースが報じられる今、監督はそれを黙って見ていることができなかったんですね。こんなにシンプルなラブストーリーを送り出すことが、この世界へのメッセージと感じる。
ラジオからはウクライナのニュースが流れるたびに、パチンと消すアンサ。無表情でも、彼女の生活を追っていると実直で心優しい人柄が見えてきて、きっと彼女はそのニュースに心を痛めているんだろうなと思わせる。
少し前、パレスチナ問題の当事者側のジャーナリストに、日本の記者が「今、日本のように平和な国に何ができるのか」と質問したら、「フラットでいてほしい。扇情的な報道や主張を鵜呑みにせず、冷静さを保ってほしい」という答えが返ってきた、という話をラジオで聴いた。この映画とその話はどこかつながっているような気がした。
当事者でもなく、力もない私たちにできることは、自分の今いる場所でちゃんと生きて、今そばにいる人を愛することしかないのかなと思う。
湯っ子

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