素晴らしい。
なんたる傑作だろう。
引退宣言を破って、
よぐこのクリエイティブな世界へと戻ってきてくれたとも言うべき、愛すべき一品。
そして、
本作は2023年を代表する(私にとっては)
とても素晴らしい作品である。
情報量は少ないように見えるが、
決してそうではない。
80分弱という、昨今にしては
短めの時間が却ってちょうど良い。
映画を愛すべき人にとっては、
本作はとても忘れられない体験となりうるだろう。
観終わってから時間毎に愛が増す。
実に可愛らしく、愛おしい映画である。
劇場で鑑賞を始め数分で、
(予告編からもそれが滲み出ているが)
アキ・カウリスマキが
改めてセンスの塊であることを感じた。
センスとは即ち、オリジナルティである。
溢れんばかりの「らしさ」がそこはかとなく本作から漂っている。
とてもミニマムでシュールな中に、
「愛すべき美しさ」があるのである。
その中にあって、
ある種(確信犯的に)
無機質にうつる登場人物が、
感情をむき出しにして、
戦争への憎悪の一言を
突如叫ぶ。
それはたった一言であった、
たった一言であったが、
何よりも圧倒的な重みがあった。
実に痛烈な批判であり、非難であろう。
そして劇は進み、
中盤から最終盤にかけての
まさかのたたみかける展開には、
ついつい笑いが混みあげた。
最後の幕引きに至るまでが、
実に鮮やかであった。
もう一度言うが、
映画を愛すべき人間にとっては
2023年を代表できうる一本たりうる
作品だろう。
全く、なんたる傑作か。
