ノストロモ

枯れ葉のノストロモのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.3
いつも通りのアキ・カウリスマキでいつも通り最高。とは言え、ここまでストレートにラブ・ストーリーなのは珍しいかも? 「愛しのタチアナ」も直球ロマンスだった気がするけど、今作はより作風が具体的でロマンティック。
アキ映画の人物ってみんな仏頂面で言葉少ないんだけど、何気なく優しく、そしてさり気なく立ち去る。その風情がたまらなく良い。現実にありがちなお仕着せスマイルのマニュアル接客みたいなものとは対極で、そこに憧れる。
今回も舞台演劇みたいな固定された画面の連続で、まず色彩がすごく良い。女性陣の衣装のカラーパレットは特に最高。ヒロインの部屋の調度も素晴らしい。男のレザージャケットもカッコ良い。
主人公の二人、絶妙に味のある顔立ちと風情で二人ともめちゃくちゃ良い。
ほとんど一目で確信するように恋に落ちていたり、お互いの名前も知らなかったり、たまたまデートの日に限ってトラブルが起きたり、他のラブストーリーだったらご都合主義過ぎてまともに見ていられないだろうに、アキ映画に関しては何もかもプラスに作用しているのは毎度ながら、何故なんだろう。
社会の隅っこでもがくように生きる者達への、暖かいんだけどベタベタとはしていない、どこか乾いた眼差しと距離感が心地よい。何でもかんでも寄り添わなくていいし、これくらいでいい。キートス。
今作も最高の、大人のおとぎ話だった。
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