待望の、アキ・カウリスマキ監督の復帰作。
どうしたって不器用にしか生きられない二人の出会いと育ち始めた愛の話し。
この物語に触れて、もしかしたら物足りなさを感じる人もいるかもしれない。
普通だな、と。
ありきたりだな、と。
でも、そうじゃない。
「普通」に生きようとして、なかなかその「普通」ができなくて、もがいてる二人が出会うことによって生まれる人生の彩り。
「ありきたり」に見える日々の中に、本当の愛みたいなものが隠れているのではないだろうか。
それは、作中でウクライナへの空爆が続いていることを知らせるラジオが流れることによって、かの地の人々がいままさに、突然「普通の日々」を奪われたことと二重写しになっている。
「普通の日々」を希求することが、世界のさまざなレイヤーにおいて、難しくなっていると訴えているように。
だからこそホラッパに送ったアンサのウインクが、例え不器用に見えたとしても、監督からの希望へのメッセージに思えるのかもしれない。
まるでそれこそ監督が復帰した大きな理由のようで。
… 初めてのデート、ジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画を観た後、アンサがホラッパに言う、「こんなに警察官が強いわけない。」という言葉には思わず声に出して笑ってしまった。