男女と労働とその生活を音楽と抑えた演出とかすかな希望で描く、カウリスマキ節で彩られた作品だった。
過去作品をなぞったようなシークエンスもあり、その辺りはサービス精神？ 現実逃避クロスワード無感情お知恵拝借、クセになってんな。
男の方は単なるアル中なんだけど、初デートでゾンビ映画観に行ったり、家も教えてもらってないのに「結婚しかけた」だとか、連絡先無くして街を探し歩いたりだとか、アホかわいいのよな。
お互いの友人も良いキャラしていて、あだち充が描くラブコメかよ、ってくらいのコテコテなストーリー。
もちろん今までのようにそれぞれの背景には失業が隣り合わせで。働けど働けどなお我が暮らし……的な苦しみが付きまとう。
ラジオからはロシア軍のウクライナ侵攻。生活に重くのしかかる社会情勢の不安。
そして色々あってどん底の状況に陥るも、そこに希望をもたらすのが、待ってましたのお犬様、かわいすぎる。
彼のおかげで絶望的な状況で癒されると同時に、その存在によって知らず知らずのうちに物語は最高のラストに向けて助走が始まっているのよな。
物語が犬＝神の加護を得てしまったわけだ。
その点、「浮き雲」では初めから犬がいたので、どれだけ夫婦がどん底に落ちても犬がいるから大丈夫だろうな、という精神的支柱にもなっていました。
ラスト、わんちゃんファーストで移動速度が容赦ないのも良かったです。
