マリオン

枯れ葉のマリオンのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.0
初めてのアキ・カウリスマキ。ノスタルジーに満ちた空気感やオフビートでカラッとした会話など独特な世界観と作家性を味わいつつ、とても温かな愛の始まりと出会う。ラジオからは暗いニュースが流れ、労働者には世知辛い出来事が重なる。それでも人のぬくもりを信じたいという願いが心に沁みる。

ラジオからはロシアのウクライナ侵攻のニュースが聞こえてくる。現代の話なのかと思いきや、昔懐かしい情緒が充満している。どこか噛み合わない男女の出会いとすれ違いは奥ゆかしくて歯痒い。けれど暗くて冷たい時代だからこそ、2人のやり取りが優しくてあったかい。

低いテンションでとぼけたようなやり取りをする作風は不思議とクセになる。そこにはどんどんよくない方向に進みつつある世界への強い憤りが感じられる。しかし、昔はよかったなんて郷愁に囚われたりもしない。今作で描かれる出会いやぬくもりは昔も今も変わらないはずだ。

「愛は世界を救う」とは言わないけど、ちょっとした日常にある愛に心を奪われる瞬間が希望の光になるって信じたい。そんな強い願いが込められているような気がして、見終わった後ちょっとウルッときた。
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