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枯れ葉のharukaのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
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日常にカメラが入ることで、日々にも価値や豊かさがあると思わせる

映画館を出た後、ふとした時にこれもまたスクリーンに映っていた時間と同種のものかもと思うことができ、少し幸福な瞬間を過ごす。

感情が毎秒、毎日表立って表出しない。日々は淡々と、無の顔で過ぎ去っていく。いつくかの瞬間では、喜びや理不尽を感じて、その時目元や口元が微々たる動きをする。

大きな喜怒哀楽が表出されないこの主人公達は、大人になって社会に組み込まれた人間(労働者)の日々そのものが、嘘偽りなく体現されているキャラクターだった。

淡々とした日常
いっとき挟まれる変化もその時が過ぎればその余韻や浮足だった感情は元に戻って淡々と働いて、家に帰り、寝る。
それが繰り返されているのが、紛れもない日常

労働
労働は単調で、つまらなく、それでも生活に直結する(生活を握る)行為で日々の大半を占めるのだと。その事実を綺麗事にはせずカメラに収めている

特別なことは起こらないけど、少しの会話、人との出会いや関係性がかわっていくことだけでも十分面白い
それが、普段の日常

冒頭、レジを通った肉が溜まっていくシーンがすごく現実的で、でも、現実では見落としている一コマで、そこに焦点を当ててることで、この映画は良いし、信用できると思った(嘘がない)


会話
熟練した言葉の交換

肩の力は抜けている粋な会話
内容は大したことないけど、2人の関係性、どういう時間を過ごしてきたのか、各々の人間性がすぐわかる

男性2人が禁煙の場所でタバコと噛みタバコをそれぞれ吸いながら休憩するシーンとか。
ずっとここで2人で休憩してきたのだとわかる

カラオケに行くのに髪を整えるシーンカッコいい
日雇いで中年だけど共同生活をしている彼の中でも最上級のオシャレで豊かさ

今の時事を後世に残る普遍的ない映画に組み込むことの効果
時代性を嫌でも感じてしまうから、なぜ、わざわざウクライナのニュースを何度も何度も意図的に入れているのか不思議だった。
2023年の日常を象徴づける必要がわからなかった。
でも、鑑賞後インタビューを読んで、ウクライナの戦争があったから引退を撤回して映画を取ったと。
戦争で無くなっていく日常や文化、日々の生活それこそが尊いと描くためにと。

それを読んで、ウクライナの戦争が2023年の時事だと思えるのは他国にいる自分だと思った、
戦争を受けた国にとっては、戦争はまだ終わってないし、終わっても、そこからの日常はしばらくずっと戦後で、決して2023年だけを象徴することではない。

それでも、やはり当事者でないものは、忘れていく。
そんな時、後世に残る強度があるこの映画が戦争があったことを映画の中では永遠にリアルタイムで報道していることで、10年、20年、100年後にまた、悲惨な戦争があった事を少しでも思い出すことになると分かった。


北欧のトーンは日本人には心地いいなと思った
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