アキ・カウリスマキ御大の手で、フィンランドに舞い降りた昭和メロドラマ。
カウリスマキ作品には苦手意識を持っていて、実は初めて鑑賞したのだが、思ったよりも見やすかったなぁ。
それでも・・・活動写真とは名ばかりの動きのない絵と音楽という演出といい、親戚のおじさんの今一つ外し気味のジョークを淡々と聞かされている様なリズムといい・・・鑑賞しながら、正直言って自分には合わないなぁ・・・
とは思ったものの、不器用な二人がデートをする姿に何故だか涙がポロポロとこぼれちゃったんだよねぇ・・・。
意外だったのは、先の見えない労働者たちが日々を精一杯生きる物語だった事。
カウリスマキ監督が小津安二郎の影響を受けた朴とつとした庶民の物語を描いているとは耳にしていたが、理不尽な運命や社会に翻弄された労働者階級の物語を描くあたりに、むしろエグ味の無いケン・ローチみたいだなぁ・・・と雑な感想を抱いた。
それとラジオでウクライナ戦争のニュースがずっと流れている演出や、チャイコフスキーの六番(ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルの録音!!)が度々使われる事、バーで演奏してる女性二人組のマウステテュトットの曲調とか・・・一時はフィンランドもロシア帝国の一部だったんだよな・・・と、あの地域の一体性も要所に感じた。
とにかく主演の二人が可愛らしくって、他の作品で目にした時よりも魅力的なのは、巨匠の演出力?
あと、犬、最高。可愛い。
ラストシーンで、けが人よりも犬の歩調に合わせて歩いている姿に笑っちゃった。なんか微笑ましかったし、あれだけで・・・きっとみんな幸せになるな・・・と確信がもてる、静かだけど力強い絵面だった。
戦争が身近になってしまった時代に、愛を伝えたかったというカウリスマキ監督の思いは伝わって来たよ。