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枯れ葉のumisodachiのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.6


アキ・カウリスマキ最新作。

ヘルシンキ。スーパーで働くアンサと、工事現場で働く酒飲みのホラッパがカラオケバーで出会う。お互いに仕事をクビになるなど生活はままならないが、初の映画デートに出かけたふたり。しかし、偶然が重なりなかなかうまくいかなくて……。

沁みる。相変わらずのカウリスマキ節なれど、全体を彩るトーンはとてもロマンチック。ふとした瞬間に目が合い惹かれあう男女が、ごく自然に一緒にいたいと望む。派手さはないがナチュラルな心の動きはとても人間的で、これこそが恋愛だよなと思わせてくれる。

すれ違うふたりを演出するベタな展開はどこか寓話じみていて、それでいてラジオから流れるウクライナとロシアの戦争の報道はどうしたって圧倒的に現実で。どこにでもいるような人間のどこにでもあるような不幸や幸せも、戦争によって一瞬で踏みにじられてしまうんだという怒りを常に感じさせ、観客に忘却を許さない。

赤が印象的に使われている画面構成、意外性がある音楽のチョイス(シューベルト歌った人うますぎたよね)、オフビートな監督はオフビートな作品が好きなんだないう映画デートの作品チョイス、可愛すぎる犬など、細部へのこだわりもたっぷり。人生の悲喜こもごもをちょっとしたユーモアで飾りながら、常に地に足をつけて人間を信じ続けるカウリスマキ。いまガザの状況をどう感じているのだろうか。

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