白波

枯れ葉の白波のレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.3
劇場鑑賞
引退宣言を撤回したアキ・カウリスマキの新作、それは静かなラブストーリーでした。
労働者階級の孤独な男女の物語なのですが、舞台が現代のようで現代のようでない不思議な感じ。
やたらでかいトランジスタラジオ。ケータイはあるものの、ダイアルの固定電話も出てきたりと何か不思議なんですね。
それとデヴィッドリーンにゴダール等の数々の映画ポスター、それに犬の名前などからも映画へのオマージュが強く現れてました。これは映画界に戻ってきた喜びでもあるのでしょうか。
それは友人でもあるジャームッシュにも。
作中で観た映画も「デッドドントダイ 」でしたものね。
相変わらずの独特の色使い、小津の様な静けさとカット、最後もチャップリンのようでした。
それと繰り返し流れる軍事侵攻のニュースも、フィンランドに住む者としての警鐘なのでしょう。
もちろん作品にはとぼけたユーモアや、センスの良い音楽も溢れていて実にカウリスマキらしいです。
特にカラオケでのガールズデュオは、その出番も唐突で印象に残りました。
とてもシャイで孤独な二人はカラオケで出会い、ゆっくりと距離が近づいては離れ、そしてもう一度巡り会う。
ホラッパとアンサそれとチャップリン。皆孤独に生きてきたけど、これからは皆で一緒に歩んでいくのでしょう。
それと彼女のウィンクが実に素敵なんですよ。
とても味わい深い素敵な作品でした。
白波

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