さらまんだー

枯れ葉のさらまんだーのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.3
アキ・カウリスマキ監督の復帰作。

決して裕福であると言えない青年〜中年くらいの男女が小さな愛を育む、現代的でコミカライズなタッチの物語。
ウクライナ戦争のニュースが何度も登場したりと戦争批判の要素が随所に見られ、監督の平和に対する願いを享受する。理不尽で、突然失われてしまうかもしれない何気ない日常の中で、心の中で大切に思う存在が在るだけでどんなに救われることか。
無表情で淡々とした人々の様子が描かれる中で、この男女の周りの人は当たり前かのように優しく協力的で、紆余曲折後の最後のカットは心が温かくなる。不恰好で、回り道だったかもしれないが、2人はここから始まるのだと。2人だけの世界があっていいのだと。この楽園とも取れる1人1人の世界を守るべく、日常に侵食し平和を脅かす戦争に対して我々は小さなことからでも抵抗していかなければならない。
また、世界一幸福な国と言われるフィンランドでも、職に困ったりアルコール依存に陥ったりと、影の部分を移す視点は単純に面白いと感じ、小津監督にも影響を受けていると聞いているが、何気ない日常をベースにゆるりと時間が過ぎる感じは大変心地よい。
急にテイストが代わり、
小津映画を思わせる風景と音楽のカットが流れたり、チャップリンの要素など監督の好きなものを多少違和感あっても盛り込むスタイルは、好きなものをとことん愛する人のかっこよさに溢れ、主張も、楽しいことも、自分の人生も、全て映画で語る映画好きということを理解した。映画のポスターや映画の話をする登場人物、映画を観ている様子を写すシーンなど、、映画愛が随所に溢れる。

途中、フィンランドのポップデュオ、マウステテュトットが演奏するシーンは必見。現代的な歌詞や虚無感ある表情、静謐さの中に響く、独特でどこかクセになるようなリズムは映画の無機質な質感にも特にマッチし、印象的。アルバム丸ごと聞いてみようと思う。

今回、監督作は初観賞となったが、
他の作品も観てみたいと思った。
監督推しのファンが増えそうな素晴らしい作品。
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