ワンダフルデイズモーニング

枯れ葉のワンダフルデイズモーニングのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
5.0
戦争へ抵抗する強い覚悟、フィクションが現実に対抗する手段としてあまりにストレートな方法はベタ。
私たちがどこまでいっても他人ゆえに起きる、二者間の思惑の"すれ違い"、それを一つの要因として引き起こされるのが戦争だったり侵攻だったりするが、男女のベタな恋模様にだって"すれ違い"はある。そして男女の恋模様のすれ違いには、爆撃も破壊も必要ない。現実で人が死んだらそれは取り返しのつかない死だけれど、映画の中ではたとえ人が死ぬ展開があっても俳優自体が本当に死んだわけじゃない。
ウソみてぇな悲劇と閉塞に包まれた現実世界への抵抗に、ウソみてぇにベタなフィクションをしめす。戦争はラジオから聴こえるだけの遠景じゃんというのは意地悪な見方すぎる。私たちは自身の貧しくて地味でそれゆえに深く根を張った生きづらさのなかにあっても、遠い異国の戦争を想像して沈痛な想いになれる。戦争よ終われ。戦争よ起きるな。そのように祈ることができる。
チャップリン「人生は近くで見たら悲劇だが遠くから見たら喜劇だ」と言っていたが、この映画でチャップリンがその名をあらわすとき、画面の中で人物たちは遠ざかっていく。悲しいことは消えてなくならなくても、遠ざかっていくことはできるはずだよ。はやく戦争終われ。そして二度と起きるな。