すげーよかった。
めっちゃよかった。
三十路の男と女の童話だね。
人間讃歌。
しかしやっぱり期待通りのアキカウリスマキ。冒頭のスーパーの憮然とした警備員のオッさんの顔最高。連れのカラオケの時の客最高。で、なんか気づいたんだけど、カウリスマキのユーモアってディスがないんだよね。
友人の歌も最後まで誰もディスらない。「ソプラノだ」とか「あのカラオケ王」とか、嫌な気持ちにはさせないんだよ。ゾンビ映画観た後の会話でも、映画通が傑作だと言った後に主人公2人は「クソ映画だった」くらい言うのかなと思ったけど「あんなに笑ったのは初めてだわ」って。お前ピクリとも笑ってなかったろ笑。
どこまで本気で言ってんのか分かんない。いやでもきっと本気なんだろうなっていうね。それはねーだろみたいなものも、受け止めきる。それってこの人間讃歌が根底にあるこの作家性の発露なんだとすら思う。そしてそれを自覚してシュールなおかしみに昇華している所がこの監督の凄みだと。
映像のトーンもやはり抜群。
地味で質素、もっと言えば底辺のような営みを描いているはずなのに画は全くしみったれてない。彩度は低いが色彩豊か。壁も、服も、床も。演技も相まって人形劇のような世界。
終わり方もいい。
最後まで女の名前分からないままとか、タイトルから誰もが想起するジャズの名曲が流れてくるとか。何よりあのウインクよ。最後の最後で観てるこっちも嬉しいよ。
前日にパーフェクトデイズという、くっさいくっさい脚本の映画観たから尚更。自分に酔ってんのかボケと。電通のくっさい広告屋は広告でオナニーしとけと。
あと、ここまで無音で耐えられるのもホント凄いなと。食事のシーン、映画館の外でタバコを吸って女を待つシーンなどなど。そこに大分被せ気味に入ってくる次のシーンのバンド音楽がまたいいね。特に後半の女2人組。キーボードとベースの。なんか歌謡曲っぽくもあるあの曲、普通にめちゃ聴きたい。なんて曲なんだろう?
文句なしにいいもん観た。ありがとう。
客がガラガラの映画館ってのもまた乙でした。