一人旅

枯れ葉の一人旅のレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
5.0
第76回カンヌ国際映画祭審査員賞。
アキ・カウリスマキ監督作。

フィンランドの名匠:アキ・カウリスマキが『希望のかなた』(2017)から久々に撮った監督最新作で、孤独な男女の恋のゆくえを見つめています。

期限切れの食品を持ち帰ったことでスーパーの仕事を解雇されてしまった中年女性:アンサと、アルコール依存で工事現場を転々としている中年男性:ホラッパの出逢いと恋のゆくえを描いた恋愛ドラマです。

いつものカウリスマキ節が全編に横溢した新作で、孤独な男女の密やかな心の共鳴をオフビート&ユーモラスに綴っていきます。女の連絡先が書かれた大事なメモが風に吹き飛んだり、女に会いに行く途上で事故に遭ったりと、偶然と不運によりなかなか恋が進展しない男女の“もどかしさ”が静かに伝わってきますし、ロシアのウクライナ侵攻の悲惨なニュースが頻繁にラジオで流れる中、北欧の片隅で小さな恋の芽を一生懸命に育もうとする不器用な男女の姿に人間の愛おしさを見る作品です。

往年の名コンビ:カティ・オウティネン&マッティ・ペロンパーに代わって、アルマ・ポウスティ&ユッシ・バタネンが日本人の共感を呼ぶ陰性の男女を淡々と静かに好演していますし、カウリスマキ映画に欠かせない愛くるしいワンちゃんの存在も大事なアクセントになっています。
一人旅

一人旅