どど丼

関心領域のどど丼のレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.7
戦時下のアウシュヴィッツ収容所、施設と塀を隔てた地に邸宅を構える所長一家とその周囲から観た戦争とホロコーストを描く衝撃作。2023年のA24最推し映画にして、今年のオスカー作品賞候補にも残る1本。前評判通りの衝撃作だった。

美しい邸宅とその周辺に暮らす何の変哲もない家族の日常が淡々と映し出される中、邸宅内で黙々と働く家政婦の様子は何かがおかしく、河辺には日常にはあり得ない何かが浮かび上がり、塀の外からは不穏な銃撃音や破裂音が鳴り響く。時折挟まれるネガ状態の映像や不自然な間の光転/暗転が状況の異常性をさらに増幅させ、狂気的な緊迫感を充満させていく。

天国と地獄に分断された二つの領域は、まさしく戦争地域/非戦争地域が乱立する今この瞬間の世界の縮図。ルドルフに異動辞令が出るや否や邸宅を手放すまいと訴える妻ホルガの姿は、まさに今の生活の外に"関心"を向けない非戦争地域に暮らす現代人に重なる。"利害"に値しない事に"無関心"でいる人間のスタンスを皮肉的に捉え、戦争と平和(?)が並存する混沌たる現代世界に警鐘を鳴らす、まさに今観るべき意義深い傑作。
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