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関心領域のnoborushのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.0
関心領域 2023年作品
8/10
原題 The Zone of Interest
ジョナサン・グレイザー監督脚本
クリスティアン・フリーデル ザンドラ・ヒュラー
傑作「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」のジョナサン・グレイザー監督作品。
「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」でも起用されたミカ・レヴィによる
サントラが不穏な雰囲気を醸し出していて最高。
アウシュビッツ収容所となりに立派な家を建てて、普通に暮らしている
ルドルフ・ヘス一家の映画。
通常のホロコースト映画は内部をじっくり描いてきたわけだが、本作の
視点は斬新で、塀の外。収容所の状況は一切写されず、煙突の煙、銃声と
悲鳴、親を求める子供の声から、なかの状況をうかがい知るしかないが、
となりの家からはその状況が丸わかりなのに、家族はそれを全く気にしない。
関心領域は自分の家の中にとどまる。
ユダヤ人女性が歯磨き粉のチューブに隠していたダイヤモンドの話で
ヘスの妻(ザンドラ・ヒュラー)は友人たちとくすくす笑い、2階に上がって、
その日の朝、護送車で到着した大勢の死刑囚の女性たちから引き上げた
毛皮を試着する。子供もユダヤ人からの戦利品(歯だが)を隠し持っている。
ザンドラ・ヒュラーは今回「落下の解剖学」でも高い評価を受けているが、
表情に乏しいというか、自分にとっては観ていてどういうわけか
腹が立つような面構えをしていて、特異な俳優だなと感じた。
普通の人達が、役割や場所により残酷になる、人の二面性みたいな感じで
本作を安易に一般化しようとすると思うのだけれど、自分はそうは思わない。
一神教で自分に絶対正義があると信じられる民族でしか、こうしたことは
起きえない。
(ルドルフがベルリンでのユダヤ人問題の最終的解決に立ち会った後に
吐き気を催したのが救いとはいえる。)
2005年と2015年にドイツに2000年と2016年にオシフィエンチムに行った
自分の結論はこれ。
ドイツの戦後に関してヘスの妻のような人達が夥しく存在し、総てナチのせいで
済ましてしまった。ドイツの右傾化は他ヨーロッパの国に比べてより悩ましいと思う。
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