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関心領域のMのネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

一日限定先行上映にて。

美しい庭に囲まれた自宅だけを区切り、塀の向こうのアウシュヴィッツは徹底して描かないのが題名の回収として完璧。

果たして本当に関心は家だけなのか。
と言っても結局家族全員が傍にあるアウシュヴィッツに影響を受けている。妻の母親が逃げ帰るのは分かりやすい。長男が次兄を閉じ込めるのも、次兄も叫び声を聴きながら遊びを中断するのも『向こう側』と本当は地続きだからだ。

妻は家に執着するが、四六時中おぞましいことが行われてるアウシュヴィッツを聞きながら、3年かけて理想の家を作った彼女が固執するのも分かる。『向こう側』があるからこそ家の美しさ、家族の幸せが映えるのだ。どこかに引っ越して叫び声から解放されては意味が無いのだ。

作戦を通した父親が覗き見る向こう側で、よアウシュヴィッツ犠牲者の展示が行われる現在に繋がるのは天晴れ。成程。でも父親は帰らなくては行けないのだ。その先にあるものが凄惨な犠牲を出すとしても、そこに関心を向けなければ自分の幸せは守られるから。

エンドロールの音楽は不協和音ではなく叫び声としての曲が作れるのかと感心半分、恐怖半分。下手なホラーより怖いのは納得。
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