このレビューはネタバレを含みます
アトロクの試写会に当選して鑑賞。
映画が始まる前に宇多丸さんや宇垣美里さんが「逃げ場がない」みたいな話をしていて、見始めてしばらくしたら、その意味がわかった。
映画の最初からずっと環境音のような空気のうねりのようなゴー…という音が聴こえて、しばらく映像が映らない。
この時点ですでに観客の聴覚が否応なしに研ぎ澄まされてしまう気がした。
そこから最後まで、ほぼ全てのシーンで微かに聴こえる銃声や悲鳴、ゴー…という音や様々な環境音が、映像には映っていないけど、すぐ近くで行われている恐ろしいことを想像しないわけにはいかず、それから逃げられない。
ラストシーンも、現代になったかと思いきやまた戻る容赦ない作りで、かなり衝撃的だった。終わったらぐったりしてしまった。
カメラを家や庭や色んなところに設置して無人で撮影したり、役者同士に、同じシーンで他の役者が何をやってるかをあえて知らせなかったりしてるらしく、日常の演技が恐ろしく自然体で、それがリアルさをめちゃくちゃ増してる感じだった。
試写会後のフリートークで、森直人さんが「ルドルフは最後嘔吐しそうになっているが、あれは病気ではない。なぜなら健康診断で異常ないシーンをわざわざ挟んでいるから」と言っていて、宇多丸さんも宇垣さんも、あーとなっていた。
大量虐殺を指揮してきた人間の身体が、自ら気付かない内に限界を超えてしまったと捉えられる、というのは本当にゾッとした。
アウシュビッツのことに対する関心領域、から世界で起こっている戦争に対する関心領域、もっと日常や社会においての関心領域と、目を逸らしている自分に関する、みんな他人事じゃない話。
試写会後にトークショーがあって本当に良かった。