てっぺい

ゆとりですがなにか インターナショナルのてっぺいのレビュー・感想・評価

3.5
【ゆとり映画】
爆笑ドラマがその世界観のまま映画化。大爆笑で心のゆとりに繋がっちゃう映画。ただし終わってみれば、ゆとり世代目線での現代の社会風刺がてんこ盛り、タイトルも脚本も実に秀逸だと気づく。

◆トリビア
○ 松坂桃李が『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』('09)を鑑賞中に、登場人物の3人が坂間、山路、道上にしか見えなくなり、宮藤に「これをゆとりでやったら行けるんじゃないか」と雑談程度で相談したことが本作製作のきっかけになった。(https://telling.asahi.com/article/15009756)
その事から劇中にも「ハングオーバー」というセリフがある。(https://www.toho.co.jp/movie/news/yutori-movie_230823)
まーちんの“あのシーン”も『ハングオーバー!』のオマージュ。(https://screenonline.jp/_ct/17657579/p2)
〇岡田将生は、本シリーズを自身の代表作であると断言。お芝居を好きにさせてくれた作品で、今でも大切な作品だと思っているという。(https://thetv.jp/news/detail/1159254/p3/)
過去のインタビューでは、「ゆとりですがなにか」の空気感にまた出会いたくて、役者を続けていると語った。(https://fujinkoron.jp/articles/-/4083?page=4)
〇脚本・宮藤は、本作でも「離婚しようよ」(Netflixドラマ)でも、松坂桃李をダメダメな人物として描くことに容赦ない笑。(https://screenonline.jp/_ct/17657579/p2)
松坂は、宮藤の台本がごく自然に、まるで本当にその場で生まれたようなボケとツッコミに見える場面でも、計算され尽くして書かれている事に、その作品を演じることの難しさを感じている。(https://screenonline.jp/_ct/17657579/p2)
○柳楽優弥は、中国語を文法も分からないまま耳で覚えて記憶し、それをひたすら練習してセリフを身につけた。(https://news.ntv.co.jp/category/culture/cd532feb43c441abb6e39251c5fba300)
ホテルに缶詰で覚えたというその中国語を、指導の先生もスタッフも驚きを通り越すほど涼しい顔で話したという。(https://www.ax-on.co.jp/news/w4lzzmkmyly9fqy9/)
○ドラマから7年、役と同じく実際に母となった安藤サクラは、坂間家のセットの整然さに「子供がいてこんな綺麗な家はない」とおもちゃを出し、画に説得力を持たせたという。(https://kansai.pia.co.jp/news/cinema/2023-10/yutori.html)
○ 吉田鋼太郎演じる麻生が“豚の民”で酔っぱらって倒れていなくなる芝居は、吉田の完全なアドリブ。(https://yutori-movie.jp/interview.html)
○岡田将生と松坂桃李はプライベートでも仲が良く、松坂桃李の戸田恵梨香との婚姻届には証人として岡田将生がはんを押したという。(https://mdpr.jp/news/amp/3985797)
〇島崎遥香は、本シリーズが初めて1人で出演したドラマ。映画では少し大人になった気がすると語る彼女は、当て書きではと感じるほど、ゆとりが自然に演じることのできる役だという。(https://www.orangepage.net/ymsr/series/interview/posts/8641)
○ドラマは通常4ヶ月ほど出演者を拘束するのでスケジュール調整が難しいが、映画は40日ほど。水田監督は続編をそんな理由で映画にしようと脚本の宮藤に提案したところ、本作の性質上、映画のようなダイナミズムを書く自信がないと当初は消極的だった。(https://news.mynavi.jp/article/20231011-2790540/)
○7年前にドラマを制作した際、脚本の宮藤は水田監督と共に100人以上のゆとり世代に取材を敢行。そのなかには坂間正和のように、脱サラして実家の家業を継ぐ青年がいたという。(https://news.mynavi.jp/article/20231011-2790540/)
○ 海外ロケも視野に入れていたものの、結局は「八王子から高円寺の間でインターナショナル感が出せるんじゃないか」と判断した宮藤は、「海外に行くつもりだったという意味の『インターナショナル』」とタイトルの意味を明かした。(https://mdpr.jp/cinema/3912838)
〇脚本は、事前に考査や法務にコンプライアンス面でのチェックを入れ、その直しを求められる。山路が教え子をまとめて「同級生ABC」と言った後で、自分の発言を反省して謝ったのは、そのようなプロセスで仕上がったもの。(https://screenonline.jp/_ct/17660648)
○衣装もセットも当時のものがそのまま残っており、岡田将生はセリフの一言目を言った瞬間から役に戻れたと話す。監督から「安心して現場に来てくれ」と言われた意味がよく分かったという。(https://thetv.jp/news/detail/1159254/amp/)
○ リモート会議のシーンはハメ込みではなく、同時にその場で撮影。その建物のWi-Fi容量を軽く超えてしまい、スタッフは全員携帯の電源を切り、その建物で働く人にも本番だけは切るようお願いした。(https://yutori-movie.jp/interview.html)
○坂間や山路がレンタルおじさんと会うカフェのロケ地は、東京・二子玉川にある「カフェ ソウル ツリー」。(https://www.zakzak.co.jp/article/20160803-XAZEJ4U2ZZIZPOEOBRCK2OCWIQ/)

◆概要
2016年に日本テレビ系列で放送された連続ドラマ「ゆとりですがなにか」の映画化。
【脚本】
宮藤官九郎
【監督】
「舞妓Haaaan!!!」水田伸生(ドラマ版から続投)
【出演】
岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥、安藤サクラ、仲野太賀、吉岡里帆、島崎遥香、木南晴夏、上白石萌歌、吉原光夫、でんでん、中田喜子、吉田鋼太郎
【公開】2023年10月13日
【上映時間】116分

◆ストーリー
「野心も競争意識も協調性もない」と揶揄(やゆ)されてきた「ゆとり世代」の男たちも30代半ばに差しかかり、それぞれ人生の岐路に立たされていた。夫婦仲も家業の酒屋もうまくいかない坂間正和、いまだに女性経験ゼロの小学校教師・山路一豊、中国での事業に失敗して帰国したフリーターの道上まりぶ。働き方改革、テレワーク、多様性、グローバル化など新しい時代の波が押し寄せる中、ゆとりのない日々を過ごしながらも懸命に生きる彼らだったが……。


◆以下ネタバレ


◆動画配信・Z世代
坂間が動画を撮影する冒頭に、子宝2人を抱えた茜が登場。ここに、本作がこの“動画配信”と“新世代”がキーになる事が示される。なるほどまりぶが勝手に笑、坂間家を配信した事は結果一家の結束に繋がり、ラストで一家各々の本音が吐露され(まさか服部と坂間母がくっつくとは笑)、また亡き父を想う家族の絆まで描かれる素晴らしいエンドロールにもなっていた。また“新世代”は、ドラマから7年、ゆとり世代の登場人物達がZ世代と対峙する事になった本作のキーワード。あの“ゆとりモンスター”山岸が後輩から告訴され、坂間も血まみれにされる笑、直接の描写もあれば、役所での茜に見る「待機児童」に「幼児虐待」、山路の生徒に見る「LGBTQ」、チェ・シネに見る「パワハラ」「セクハラ」に「アルハラ」まで、Z世代と共に生まれた現代の間接的な社会風刺がてんこ盛り。流石のクドカン、軸が定まり緻密に練られた脚本が素晴らしい。

◆笑い
これを求めて本作鑑賞。下半身全モザイクの坂間笑、マッチングアプリデートに麻生をリモート参加させてしまう山路と笑、画力で笑わせてくるあたりがニクイ。まりぶの“チェ・シネさんからチェ死ね頂きました”笑、茜の役所での“特に夜”発言笑、まりぶの嫁が意味不明な中国のことわざを挟んでくるあたりも、セリフで散々クス笑い。また“インターナショナル”ならでは、中国人の“負け犬”呼ばわりに気づかず笑顔の坂間笑、“鬼嫁”と呼ばれてショックの茜、“何言ってるか分からないけどディスられてるのは分かる”山路と、言語の違いで笑わせてくるところもさすがだった。

◆インターナショナル
コロナ禍で海外ロケに行けなくなり、“海外に行くつもりだったという意味”とタイトルをこじつけたクドカン笑。見終わるとなるほどちゃんと全面的にインターナショナルだったし、そこにドラマシリーズのOPを挟み、ドラマのシーンも数々回顧され当時の世界観を崩さなかったのがファンには嬉しい。国内でのインターナショナルを描く事で、“多様性”というキーワードで繋がる前述の社会風刺も多数盛り込まれる、よく考えれば何気に秀逸なネーミングだった。水田監督はラストに出した“つづく”を「このゆとり世代の人生は続く」という意味でつけたと明かしたが、いやいや製作陣の意欲の表れなのは間違いないし、鑑賞する我々の希望でもある。「ゆとりですがなにかの空気感にまた出会いたくて役者を続けている」とまで言い切った岡田将生のように、是非ともこの空気感にまた自分をいざなって欲しい。

◆関連作品
○「ゆとりですがなにか」
ドラマシリーズ。2016年4月から6月まで日本テレビ系列で放送された。特別編「ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編」が2017年7月に放送、スピンオフドラマ「山岸ですがなにか」が同7月から配信された。全てHuluで視聴可。
○「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」('09)
本作製作のきっかけになったという洋画。こちらも笑えます。エンドロールで大伏線回収。プライムビデオ配信中。

◆評価(2023年10月13日現在)
Filmarks:★×4.2
Yahoo!検索:★×3.6
映画.com:★×4.5

引用元
https://eiga.com/movie/99336/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ゆとりですがなにか
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