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ゆとりですがなにか インターナショナルのumisodachiのレビュー・感想・評価

4.3


7年前にヒットしたドラマシリーズの映画化作品。

夫婦仲も家業の酒屋もうまくいかない坂間正和は、空回りして鬱々とした日々を過ごしていた。いまだに女性経験ゼロの小学校教師・山路一豊はさらにこじらせていて……そんな中、中国での事業に失敗して帰国したフリーターの道上まりぶが坂間の酒蔵で働くことに。こっそりと中国国内の動画配信サイトで坂間家の実況レポートを始めたまりぶだったが……。

いやー、笑った笑った。ドラマ放映時は毎週楽しみに見ていたものの、ほぼ記憶がなかったのだが問題なし。初見でもいけるんじゃない?っていうくらいのつくりになっているし、もし人間関係やネタがわからなかったところで、全体としては面白いから問題なし。

3人はどっからどう見ても大人な年齢に差し掛かり、社会的な責任も重くなっている。親として、配偶者として、会社の責任者として、「ちゃんとしないといけない」というプレッシャーがあるのがドラマの芯にしっかり感じられるのもいいし、彼らが「ちゃんとすること」に対してポジティブなのがいい。逃げたくても逃げないし、イヤイヤではなく積極的に家族を愛し、周囲の人々を幸せにしようと奮闘しているので、取っ散らかっているけれど【大人の物語】として成立している。

SNS、LGBTQ、セクハラ、パワハラ、コロナ禍の余波、セックスレス、待機児童問題、Z世代と、社会的な要素をこれでもかと盛り込んで同時多発的に事件が起こる。意外とそれぞれがテキトーにはなっていなくて、しっかり考えられているのに感心した。特に、子どもたちのLGBTQ関連の顛末は白眉。「まだよくわからないから(子どもだから)、決めつける必要はなく、でも感情は感情として素直に受け入れて人間関係を構築していく」という見事な落としどころを子どもたち自身に見つけさせていて、あまり今まで見たことがない丁寧な語り方にハッとさせられた。

あと、バカバカしい笑いの中で、ちょいちょい良いこと言うんだよね。いま放映中の連ドラ『いちばんすきな花』が私は苦手なのだが、その理由が「良さそうに聴こえるセリフを言うために、無理やりストーリーを構築している」と感じる点。そうではなくて、本線がしっかりあって(本作の場合はバカバカしいドタバタ)、その合間にふと真実味があるエッセンスを織り交ぜた方が、断然心に響くと私は思う。

中心の3人を始めとして、キャストもとても良かった。MVPは、中国語も駆使していた柳楽優弥かな。おすすめです!
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