旅するランナー

少年、機関車に乗る 2Kレストア版の旅するランナーのレビュー・感想・評価

3.9
【再発見!フドイナザーロフ/ゆかいで切ない夢の旅】

原題「БРАТАН(Bratan)」はロシア語で兄弟の意味。
というわけで、17歳の兄と7歳の弟による機関車ロードムービーです。

マイペースな運転手、
カップ売りおじさん
少年たちによる襲撃、
ルーレットデコピンに興じる少年たち、
綺麗なお姉さんたちと、
旅は道連れ世は情けねえ。

26歳の長編デビュー作にして、この切なさと可笑しさと心強さを写し撮った、フドイナザーロフ監督の才能が感じ取れます。
場面に合った、キャッチーでリズミカルな劇半の使われ方もお見事です。
日本人の常識からかけ離れた、不思議な旅に連れていってくれます。
ノリ鉄必見。

<扇千恵さん(ロシア映画紹介者)トークショー>
·バフティヤル·フドイナザーロフ監督の略歴
1965年6月29日タジキスタン共和国ドゥシャンベに生まれる。
国立ラジオ·テレビ委員会ジャーナリスト、テレビ番組の脚本家、助監督として働いたのち、20歳でモスクワの国立映画大学監督学科に入学。
(ソ連ではこの大学を卒業しなければ映画監督になれない)
89年に卒業後ドゥシャンベに戻って映画撮影を始める。
1993年よりドイツに定住しながらロシアで映画制作を続ける。
2015年4月21日ベルリンの病院で死去(肝臓ガン)。
ベルリンのロシア人墓地に埋葬される。

·弟の愛称「ポンチク」は「丸型の揚げパン」の意味。
「デブちん」と訳した字幕は素晴らしい。

·監督はインタビューで「私たちは内面にある水を失ってしまった」と言っており、遺作映画「海を待ちながら」まで、一貫して水へのこだわりを見せている。