イワシ

少年、機関車に乗る 2Kレストア版のイワシのレビュー・感想・評価

5.0
西部劇的記憶が刺激される列車という装置だがそれを被写体にするというより、線路が通る村や駅の女性や子ども、遥かな山並みの稜線などを列車の視点から捉え、活劇とは異なる運動の瑞々しさが画面を満たす。走行中の列車を渡る機関士のアクションは何のために為されるか。

逃げる馬を必然的に追いかけてしまうファントム・ライド的なショットは馬が線路を横切ろうとする瞬間ごとにサスペンスになり、貨物車に置かれたであろうカメラが捉えた線路沿いの光景では自転車の少年たちが次々に転倒する様子を垣間見させ、過ぎ行く風景を活気づかせる。

冒頭から凄い。煙突型モニュメントの天辺から滑り降りる男の子と地上で遊ぶもう一人、カメラがパンダウンすると彼方から荷物を抱える少年が現れ、カメラが少年をフォローすると背景の木の周りに動きが見え、荷物を持つ少年はそこに向かうだろうと予想するとカットが変わり、チムール・トゥルスーノフが木の根元で微睡んでいるショットへ瞬間移動したかのようにつなげられる。
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