モササウルス

コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って 4Kレストア版のモササウルスのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

フドイナザーロフ特集3本目。彼のフィルモグラフィとしては監督2作目の作品。個人的にはいままで見た三本の中で1番好きだった!大傑作。

久しぶりに父親を訪ねにきた娘が父親のギャンブルの取り立てに来た父の友人に抵当にとると言われ、直前に出会ったギャンブル仲間の1人である青年と彼が暮らすゴンドラに逃げる話。
平和に見える人々と裏腹に街中に絶えず響き渡る銃声、夜になると厳戒令が敷かれ戦車や軍用車両が街中を走る光景、そして街中で身を寄せ合う難民たち。これらが日常の光景になっている。そんな当時のタジキスタンの現状を下敷きにした寓話。
街から丘の上にあるゴンドラの駅に逃げる2人の境遇は、映画の中で印象的に扱われている内戦による難民たちを象徴しているのだと思う。身内の争いに巻き込まれ身内の都合で故郷を追い出される悲劇。行き場のない怒りが明るい活力となり笑いとなる。明るさの中の悲しみがこの物語の通奏低音にある。

やはりゴンドラのシーンは印象的で、人々の暮らしの中にある生活感に溢れた描写が好きだった。後半の銃声の音を背景に動き出すゴンドラの中で2人がただ抱き合うシーンはとても美しい。