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コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って 4Kレストア版のmasatoのレビュー・感想・評価

4.5
バフティヤル・フドイナザーロフ監督の映画を初めてみた。1965年にタジキスタン共和国に生まれ、ロシアの国立映画学校で学び、6本の長編映画を残して2015年に49歳で亡くなる。遺した作品はヴェネツィア映画祭や東京国際映画祭でも、数々の賞を受賞している。

ああ、それなのに、今まで一本も見たことがなかったなんて。そうんな監督や作品はまだまだ山のようにあるんだと思うと、なんだかゾッとする気持ちと、ワクワクする気持ちが一緒くたになる。

しかも、タジキスタン共和国という国についても、ほぼ知らなかった。世界は広くて、歴史は長くて、映画は深いなあ。

で、この作品はとても面白い。おっさんたちが街の片隅で賭博をしている。そのいざこざがきっかけで、若い男女が出会い恋をする、というお話。ストーリー自体はいたって可愛らしいのだけれど、この映画の撮影時に内戦が勃発し、作品にも内戦の模様が取り入れられている。だから、二人が抱き合っている時にも、銃撃戦の音が入っていたり、夜のシーンは戒厳令下であったりする。

しかも、男の職業がロープウェイの操縦士で、ときに男女が不安定なゴンドラの中で語り合っていたり、逃げ出そうとする女を、男が操縦室で操作をして、ゴンドラを引き戻したりする。物語がシンプルなのに、背景の全てが不安定すぎて、見ていてドキドキしてしまう。

なんとなく、アッバス・キアロスタミを彷彿とさせるけれど、もっと泥臭くて、汗臭い感じがいい。

北千住の芸術センターにあるシネマブルースタジオで今日から上映が始まった。椅子はよくないけど、1000円でフィルム上映が楽しめるのはありがたい。
※たぶん、DCPに対応してなくて、フィルム上映しかできないんじゃないかと予測しているんだけど。
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