Masato

クレーターをめざしてのMasatoのレビュー・感想・評価

クレーターをめざして(2023年製作の映画)
4.1

かくも美しく、切ない冒険譚

Disney+オリジナル作品。2257年の月面コロニー。父を亡くして孤児になり惑星オメガへと旅立つ主人公は最後に親友と無謀な冒険へと出かける。その目的地は父親に行くと約束したクレーターだった。

ストシン制作陣、ショーン・レヴィ製作のジュブナイルSFアドベンチャー。マッケンナ・グレイスが出ていたので気になって鑑賞。ユーザー評価が低いが、思わぬ良作だった。スタンド・バイ・ミーを彷彿とさせる少年たちの冒険、大作ではない限られた規模感で最大限の物語を展開していき、最後はギュッと切なさで胸いっぱいになる映画で良かった。

ファミリーやティーンに向けた作品だが、主人公たちの置かれている立場がわりとキツくて悲しくて、だからこそこの無謀な冒険をする意味合いが強いのが良い。それぞれの持つ悩みが家庭環境に由来するものである以上に、本作のSF設定の社会背景が大きく関わっていることからも、設定の活用が重要なSF作品の醍醐味を十分に活かしていると言える。

月に採掘コロニーを作り、理想の暮らしを実現させる理想郷を作って移住していく計画があったのにも関わらず、途中で惑星オメガという良い環境の惑星を見つけたことから月の理想郷の開発計画は頓挫。また、オメガへは富裕層のみしか行けなく、月には労働者階級の貧困層だけ残るようになった。おそらく月の採掘コロニーは捨てられないので、労働者を行かせないように20年縛りをつけたうえにわざとペナルティを重くしている。都合の良い奴隷化。

こうした惑星を跨いだ格差社会が生まれていて、それに親も含めて振り回されている子どもたちという設定が非常に良かった。決して現実離れした設定ではなく、貧困層というものが良いように使われて、誰にもその事実を知られないように隔離されている生活が、格差が顕著となってきているこのご時世をしっかりと反映している設定。

また、家庭の事情で友達と離れ離れになってしまうといった最小単位のありふれた物語(でも子どもたちにとっては重要なこと)とも重ね合わさるようになっていたり、月へ移住してきて地球を知らないか伝聞でしか知らないという設定も、特にアメリカに多い移民2世3世とも重ね合わせられるし、現実からSF物語への昇華のさせかたが巧みだなと感じた。

少年たちが身勝手で無謀で大人からしたらフザケンナヨみたいな冒険をすることへの言い訳がちゃんと設定的にも付与されていてバランスが取れているし、大切な意味を持つということをしっかり描いている。これでクソガキとか怒っているなら相当理解力がないと思う。

最後はとある名作映画のような展開になって、分かってはいても切なくなる。この展開本当に弱くて泣けちゃうな。この設定をジュブナイルとして使ったのは良い。最高のエンディングだと思う。

大作ではないから出来ることも限られていたと思うけど、ここまで描けていたのは正直驚いた。

マッケンナ・グレイスちゃん、結構成長してて子どもの成長の速さを感じる。安定の可愛さ。何故かKid Cudiが父親役で出ている。Man on the Moonっていうアルバム出してるからか?笑
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