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ドラキュラ/デメテル号最期の航海のsymaxのレビュー・感想・評価

3.7
"みんな分かってる…この船の行き先はロンドンではない…《地獄》だと…"

商船デメテル号に積み込まれたのは、無記名の木箱50箱…だがその木箱には"ドラゴン"の紋章が…

船長の孫を事故から救った事で、船員兼船医として船に乗り込んだクレメンス…ロンドンまでの航海は順調に思えた…だが、家畜が何かに噛まれた無惨な姿で発見…やがて夜な夜な一人また一人と姿を消す乗組員…人ではない何かがデメテル号に乗っていたのだ…それは…

ブラム・ストーカーの古典"吸血鬼ドラキュラ"の中でも最恐と呼ばれる第7章を映像化した本作は、航海中の船内という閉ざされた空間を上手いこと利用したサバイバル・ホラーな力作となっております。

そう、まるで"エイリアン"…面白い…

そもそも、原作はストーリー仕立てとなっている訳ではなく、物語は三人称で、全て日記や手紙、電報や新聞記事等で構成されていて、実際には何があったのかを読者に想像させ、徐々にドラキュラ伯爵の企みを炙り出させるという凝った作りになっていまして、中々読みずらい作品なのですが、第7章は船長の簡潔な文章の航海日誌で日誌を読み進める内に読み手一人一人の頭の中に船内での恐怖を想像させるという…そういう意味では"最恐"なのです。

スティーブン・キングの処女作"キャリー"もこの方式を取っていまして、まぁ〜読みにくいんですが、ジワジワと後から恐怖が追っかけてくるという傑作です。

本作でのドラキュラは、クリステファー・リー的紳士な出立ちではなく、"ノスフェラトゥ"的モンスターな御姿なので、益々"エイリアン"のようですが、そこは"ジェーン・ドゥの解剖"という怪作を作ったアンドレ・ウーブレダル監督…ピンと張り詰めた恐怖演出は流石です。

デメテル号の美しくも恐ろしげなデザインが素晴らしく、船内に鳴り響く"ノック"と共に現れる恐怖は、残暑厳しい今まさにピッタリの怖い話でありました…
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