ぶみ

ドラキュラ/デメテル号最期の航海のぶみのレビュー・感想・評価

3.5
嵐の大海に、逃げ場はない。

ブラム・ストーカーが上梓した『吸血鬼ドラキュラ』から「デメテル号船長の航海日誌」部分を、アンドレ・ウーヴレダル監督、コーリー・ホーキンズ主演により映像化したホラー。
謎の木箱を運ぶため、カルパチア地方からロンドンへ向かうデメテル号で毎夜起きる奇妙な出来事を描く。
ドラキュラについては、ニンニクが苦手等の基礎知識がある程度であり、原作は未読。
主人公となるデメテル号に乗船するこことなった医師・クレメンスをホーキンズが演じているほか、ハビエル・ボテット、リーアム・カニンガム、ウディ・ノーマン等が登場。
物語は、デメテル号の船内で夜になると起きる不可解な出来事が描かれるのだが、原作を知らない私は、もし、これが原題のとおり『Last Voyage of the Demeter(デメテル号最期の航海)』というタイトルであったら、何をテーマとした作品なのかわからなかったものの、邦題はバシッと「ドラキュラ」を謳っているため、所謂「吸血鬼ドラキュラ」を扱っていることを理解できた次第。
内容は、至ってシンプルで、1800年代後半のイングランドを舞台として、ほぼほぼデメテル号の船内だけで展開、夜な夜な現れる謎の怪物と対峙するという構図になっているため、逃げ場のないワンシチュエーションものと言っても過言ではないが、夜のシーンが多く、全体的に暗めの映像となっていることから、時折凝視しないと、何が起こっているのかわからないことがあったのは残念なところ。
ただ、モンスターパニックものとしては上々の仕上がりであり、多分、ドラキュラものを観るのは何を隠そう初めてなのだが、ドラキュラの特性がしっかり反映されたものとなっており、圧倒的な強さを誇る相手に対し、どう立ち向かっていくかというシンプルな展開ながら、終始飽きることはなく、またその年代設定から醸し出されるゴシックホラー的な雰囲気も満点。
難点を挙げるとすれば、肝心の舞台となる大海原のCGが若干チープであることと、前述のように飽きることはなかったものの、映像にあまり変化がないことから、若干尺が長かったかなと思った程度であり、モンスターパニックものというジャンル映画として、十分満足いく仕上がりであるとともに、ドラキュラ初心者でも楽しめる一作。

世界は理屈など気にしない。
ぶみ

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