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ドラキュラ/デメテル号最期の航海のCINEMASAのレビュー・感想・評価

2.7
 ブラム・ストーカーの超有名な小説『吸血鬼ドラキュラ』の第7章を映画化した作品。

【ルーマニアからイギリスへ渡るドラキュラの航海の旅を描く。一人、また一人と狂牙の餌食となっていく船員たち……】というスジ。

 監督が『トロール・ハンター』、『ジェーン・ドウの解剖』のアンドレ・ウーヴレダルなので、やや期待して臨んだ。撮影を2000年代以降のクリント・イーストウッド監督作品を多く手掛けているトム・スターンが手掛けているのも魅力的。

 うん、造りは悪く無い。有名スターは出演していないが、ルーマニアの街並みを再現したオープン・セットなど見事なものだ。

 但し、ホラー映画としては中途半端であった、というのが正直なところ。

 登場するドラキュラ伯爵は<ノスフェラトゥ型>であるらしいと聞いていた。ノスフェラトゥ型ドラキュラ映画の始祖はF・W・ムルナウ監督の『吸血鬼ノスフェラトゥ』だ。(←この作品は、原作こそブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』だが、映画化権を取得出来なかったため、オルラック伯爵という名になっている。尚、<ノスフェラトゥ>とは<不死者>の意である) その他の作品だと、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『ノスフェラトゥ』、トビー・フーパ―監督の『死霊伝説』(←本来はTV映画)、E・エリアス・マーヒッジ監督の『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』等が有る。

 が、本作の場合、ノスフェラトゥ型の姿を見せるのは終幕のワンカット、それも一瞬のみ。物語が進むにつれて(血を吸うに従って)、その容貌は変化を遂げて行く。最初は『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム風。その後、羽を擁した完全なモンスターと化し、最後にチラっと人間様な姿を見せる。

 おまけに、本作に登場する吸血鬼には十字架が効かない!!!

 あ、これ! 原題が『THE LAST VOYAGE OF THE DEMETER』であって、ドラキュラのドの字も無いのね。邦題詐欺である…… うん、ドラキュラじゃあないって事なのね。ドラゴン騎士団の紋章は画面に示されるけれど、ドラキュラという固有名詞は登場しなかったように思うし。

 となると、これはドラキュラ物というより、吸血モンスター・パニック映画である。原作小説の第7章の設定を踏襲しつつ、ドラキュラ物では無いという変化球。よって、ゴシック・ホラーではない。撮影はなかなかに見応えがあったけれど、ショッカーとしても然程には冴えない。やや鈍重な出来。最後まで飽きずに見せ切るだけの地力は有るが、やや残念といったところ。
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