リコリス

愛にイナズマのリコリスのレビュー・感想・評価

愛にイナズマ(2023年製作の映画)
4.9
石井監督って凄いな。この映画、コメディなのかシリアスなのか分からないが、分けること自体に実際の人生思い出すと意味がない。

家族である証明は、その場に全員いても、戸籍謄本がないと信じて貰えない。ハグしなくても、全く別々みたいでも、怒鳴り合っても家族。カサヴェテスの「こわれゆく女」を思い出した。

窪田さん(あんなに出だし、存在消してるのにね…)演じる、家族を持ったことのない舘。神が地上にいるなら、こんな感じなんじゃないか。だんだん神に見えてくる。神は側にいる? 死者も側にいるように。

佐藤さん父が蝋燭を持つ姿が泣ける。家族であるのは一緒にいる時間の長さではない。一番幸せのハズの時間に他者が割り込みぶち壊す。まさかの正義アベノマスク仮面。

観た人には分かるキーワード。吊り下げられた牛。消えた女。雷と停電。演じること、隠すこと、隠してあること。赤。ジュラ紀の恐竜。1500万円。カルトでなくカトリック。ハグ。

物凄く練られてる脚本。画面の隅々まで選ばれてる小道具や場所、色彩。そこに演技派投入。映画というか、芸術の虚構と現実についてもかんがえさせる(画面の使い方、秀逸)。最後まで見ると、最初に目に入ってたモノやセリフが蘇る、という。

個人的には、電灯の紐に恐竜フィギュアが吊ってあるのと、舘の部屋の漫画に諸星大二郎入ってたのがツボ。最初と最後の赤を探すショートフィルムも良かったな。

傑作。見てね。
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