人は皆何かの役を演じている。取り繕って、嘘ついて、何かを諦めて、無かった事にして。そんな無かったことにされた人たち、ものたちでさえ、カメラの前では皆平等に顕になってしまう。誤魔化しや偽善に疲れ切った人々のための、愛とイナズマの物語。存在を確かめ合うように、ただ集うことの重みを大事にしていきたい。
あらすじだけを見てみたところで、この作品の本質的な部分は1ミリたりとも伝わらない。何が良いところなのか、全く持って言語化はできないけれども、見ている時には染み透るような水の中を揺蕩うような心地いい印象を覚える。そんなに器用に生きれはしないけれども、揺るがしたくない大事なものはきっとある。そんな消えない思いを丁寧に掬い取る140分間。
我慢の末のキレを発動させたらピカイチの松岡茉優に、今は比較的穏やかだが昔はかなりアレだったことも想起させる佐藤浩一、妙にマッチョなところに馴染もうとして馴染みきっていない池松壮亮、大人しそうで何を考えているかまでは掴みきれない若葉竜也、愚直すぎてどこか不思議なところまで行っている窪田正孝。演技が達者な人たちが集まって、余白や行間を全力で描き出している。
