CHICORITA主任

北極百貨店のコンシェルジュさんのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

3.9
同名コミック作品をProduction I.Gがアニメ映画化。上映時間70分と中編作品といった規模感ですが、I.Gらしい非常に丁寧なアニメーション表現が楽しい一本に仕上がっていました。

アトロクリスナーには馴染みの深いtofubeatsが手掛ける音楽も見所(聴き所)で、ちょっととぼけた感じの百貨店テーマソングがいい感じでした。

ストーリーは絶滅動物を人間がもてなすというファンタジックな百貨店を舞台に、新人コンシェルジュの成長を描くというもの。尺短めながら笑いどころ・泣きどころもきっちり押さえられており、満足度は高め。

そして何より本作の魅力はアニメーション表現の豊かさ。井上俊之や本田雄らレジェンド級アニメーターが名を連ねるエンドロールに、思わず「おおっ!」と声が出ました。
特に印象的だったのは、キャラクターが停止しているシーンでの「ぶれ」の表現。セル画時代であれば、フィルム撮影時に生じる自然なぶれがあったものですが、デジタル撮影ではそうもいかず、ともすれば完全に画面が静止しがち。しかし本作ではわざわざ輪郭線を揺らす効果を恐らくは原画段階で加えることでブレを表現し、画面が静止して「死ぬ」ことを避けていました。こういった表現には見た目よりはるかに手間がかかっているはずで、シンプルに見えても豊かな画面を生み出すために費やされた労力には頭が下がる思いがします。

小粒ながら気合の入った素晴らしいアニメ映画でした。細やかな表現の数々はぜひ劇場の大画面でご堪能ください。
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