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北極百貨店のコンシェルジュさんのISHIPのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

西村ツチカさんの名作が映画化。遅くはなったが映画館上映に間に合って心底良かったとしか言えない内容。秋乃さん始め、動物たちが動いている姿を観るだけでも最高。動きがまじで良い。カット割りというのか、アニメーション特有の表現がバチバチとキマッて気持ちいい。そのせいで冒頭からグッときてしまった。音楽も良すぎんだろと思ってたらtofubeats。デパートの歌は作詞澤部渡て。めちゃ最高布陣で良い仕事の応酬。物語の内容とリンクしてしまうではないか。
さて、物語は非常にポップなテイストなのだが、底にあるのは人間の欲望によって絶滅してしまった動物たちを、その乱獲の一端を担っていると思われる百貨店でもてなすという対比の構造。その他にも、物語内には販売終了になってしまった香水、彫刻の破損など、ものは有限であったり、1度壊れてしまったものは元には戻らない、というモチーフが登場する。では、そうなった時、僕らはどうする?とか、そうならないためには?そういったことが描かれているように思う。それは、赦しや、ホスピタリティ、人と人の支え合い、そういうことなんじゃないかと。ただ、アザラシのような行き過ぎた「お客様は神様です」態度もあり…(これも絶滅の経緯を聞くとあの態度が対比になっていることがわかるが)、ホスピタリティというものの難しさも描かれてる。
ここで、赦し、とか言ったんだけども人間がやってしまったことって本当に取り返しのつかない事で、許されていいことなどではないんだよな。それは絶滅動物に対してだけではなく、人間同士の争いとか、悪しき歴史は数え切れないだろう。その悪しき歴史を無かったことにして過ごすんじゃなくて、それを知った上でどう過ごす?そういう眼差しにこの作品は満ちている。
財布や食事に動物が犠牲になってるじゃねえか、というツッコミがあるようだ。確かに。でもそう考えることって大事よね。この物語を観た者として正しい姿勢だと思う。
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