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タイタニックのnoteのレビュー・感想・評価

タイタニック(1997年製作の映画)
4.3
1912年、イギリスから豪華客船タイタニックが処女航海に出発。画家志望の青年ジャックは上流階級の娘ローズと運命的な出会いを果たす。ローズの婚約者の資産家や、保守的な母親などの障害を超え、若い二人は互いに惹かれ合う。しかし、航海半ばでタイタニック号は氷山と接触。船は刻一刻と冷たい海の中へ沈め始めていた…。

この作品に誰もが感動する理由は、避けられない惨事の中、大勢ではなく、若く未来のある2人の恋人たちの悲劇に焦点を当てたことにある。
新天地アメリカに夢を抱く、まだ何者にもなっていない若者と、政略結婚を控えたお嬢様の身分違いの燃えるような恋。
それはお互いの未来に見つけた希望であり、それが抗いようのない力によって失われるところが悲しいのだ。

まだ若さゆえの生意気さと情熱が同居したジャック役のレオナルド・ディカプリオ、健康的な色気の中に、苦悩と自己憐憫が漂うローズ役の若きケイト・ウィンスレットは眩いばかりに輝いている。
若者とは、誰もがかくも輝いているものだ。
映画を見る者は、若い者ならば主演2人のような恋をしたいと憧れ、または、年月を重ねた者ならば、かつてはそうであったと自分を重ねるのだ。
若い頃は誰もが世の中の主人公が自分である信じて疑わない。

そんな輝く2人に、沈没という大惨事が訪れる。
美術やCGをはじめとして、ジェームズ・キャメロン監督の絵作りの豪華さと緻密さには圧倒される。
公開20年以上が経過した今でも全く古臭く感じられないのは驚異的だ。

この映画の公開後、911テロや東日本大震災、コロナウィルスの流行が起こり、悲劇に見舞われた大多数の人々に、私たちはニュースや記録映像を見て、想いを馳せてきた。
多くの犠牲者の一人一人に人生があり、その人々の輝かしい未来が潰えたことを、私たちは知っている。

この作品は、公開当時に劇場で見たのだが、当時は若かったために冷めた目線で見ていた。
2人を取り巻く人々の描写が薄く、なぜ身分を乗り越えてまで結ばれようとしたのか説得力がない、と。
だが若い頃の恋とは、周りが見えなくなるものであり、所詮は盲目なのである。

むしろ様々な人生経験をした今だからこそ泣けた。
惨事の中に消えて行った若い恋人達の尊い輝きを、今の自分は痛いほど充分に想像できるようになったからだ。

若き日の輝きが薔薇色の世界と共に失われる。
豪華客船の船出は、若い頃の旅立ちの希望であり、沈没は世の厳しい現実と挫折、そして年老いたローズの描写は、時の流れの残酷さだ。
海に沈んだ宝石の如く、時を経たとしても誰にも侵されず、心の中でのみ輝く美しい思い出を誰もが持っている。
年月を経たからこそ、共感できるものがあった。
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