けーはち

タイタニックのけーはちのレビュー・感想・評価

タイタニック(1997年製作の映画)
4.3
キャメロン監督の「エイリアン2」「ターミネーター2」に次ぐブロックバスター大快作にして、レオ様の美しき快男児ぶりを世に知らしめた主演代表作(本人は本作で定着したアイドルイメージを払拭すべく以降は演技派で奮闘するのだが)。劇中のメインイベントはあまりにも有名な豪華客船の海難。悲劇の結末は確定しているのだが、それでいて老女=語り部となるローズ(ケイト・ウィンスレット)の生存は確約されており、本作を美男美女の悲恋劇としてウットリ観ていたい層への安心親切設計は抜かりない。身分違いの若者たちの恋路は、アイコニックな船首でのポーズや、窓ガラスが曇るほどの車中での甘く熱烈な逢瀬が印象的。しかし後半の沈没パートに転じるや程なく主役2人を含む様々な乗員・乗客の運命を巡る群像劇の色を帯びる。特にパニックの渦中で演奏し続ける音楽家、動揺のあまり乗客を撃ってしまい自決する船員、船の設計者の深い悔恨や、船長のまんじりともせず海に呑み込まれる姿などが心に残る。

大掛かりな客船のセットを使う特撮や、絢爛豪華な美術・衣装は言うに及ばず、音楽も繊細かつ物語に寄り添って端正。とりわけ2人が3等船室でギネスビールを飲みながら夜を踊り明かすシーン、並びに逃避行のシーンではアイルランド民謡のJohn Ryan's Polkaが流れるのだが、アイルランド楽器のティン・ホイッスルの音色はローズのテーマや主題歌「My Heart Will Go On」にも各所でリフレインされており、自然とその哀愁漂う音色に合った形で物語の空気感が統一されて、泣けるエンディングへの情感を沸々と高めてくれる。文句なく完成度の高いロマンス+パニック・スリラー超大作である。