鶏

ペナルティループの鶏のレビュー・感想・評価

ペナルティループ(2024年製作の映画)
2.6
『タイムループ物と思って観たら・・・』

伊勢谷友介の復帰第1作となった本作は、題名からするとタイムループ物でした。タイムループ物というと、最近1年に1作観ている感じで、2022年が「MONDAYS また月曜日がやってくる」、2023年が「リバー、流れないでよ」、そして2024年が本作となりましたが、前2作はいずれも好きなタイプの映画だったので、伊勢谷友介の復帰作という話題もあって本作には結構期待していました。果たしてその結果は?

まずループするスパンですが、「MONDAYS」は月曜起点の1週間のループ、「リバー」は僅か2分間のループでしたが、本作は6月6日月曜日の1日のループでした。この設定は、直近のタイムループ物との調整を図ったのでしょうか。ただ前2作との大きな違いは、その雰囲気にありました。前2作はどちらかと言うと明るい色調のお話でしたが、本作は徹底的に暗い色調で、ミステリー要素が強い作品でした。
また、何故タイムループが発生しているのかが、観客も登場人物も分からない状況でスタートするというのは、全ての作品に共通していましたが、前2作は登場人物が誰であり、彼らの置かれている状況がどんなものであるかということが観客に共有されていたのに対して、本作は主人公の淳が一体どんな状況に置かれているのか、彼は何故溝口を殺し続けなければならないのか、淳の恋人の唯の身に何が起こったのかなども、全く分からない状況でスタートする物語であり、この点も前2作と大いに異なる味付けになっていました。
そういう意味では、大いに意欲的で実験的な作品だったと言えるかと思うのですが、ではそれが成功したかと言えば、私には成功していたようには思えませんでした。その理由はと言えば、結局のところタイムループの仕掛けがちょっと反則技にしか思えなかったところにあります。
人の生き死にを扱っており、それが得体の知れない大きな力によって支配されている雰囲気が感じられた点は、「PLAN75」っぽい所もあり、それはそれで評価出来なくもないものの、一番大事なタイムループの仕掛けそのものが「レディ・プレイヤー1」で観たようなバーチャル世界のお話ということになっていて、これって夢オチと変わらないじゃないかと思った次第です。

ところで本作で3年ぶりに復帰した伊勢谷友介ですが、以前はちょっと不気味でおっかないイメージを持っていたのですが、本作では結果的にお茶目なところもあるナイスガイを演じていました。意識的にドギツイ役どころは避けたのかも知れませんが、今後の平穏なる活躍を期待しています。

そんな訳で伊勢谷友介を再びスクリーンで観られたことには満足したものの、内容的には今ひとつだったことから、本作の評価は★2.6とします。
鶏