Breminger

ペナルティループのBremingerのネタバレレビュー・内容・結末

ペナルティループ(2024年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

コロナ全盛期、映画に飢えて遠くの映画館までいって観て衝撃を受けた「人数の町」の荒木監督の新作ということでワクワクしながら鑑賞。
「青春ジャック」含め自分の中の映画に対する感情の転換点となった作品がこの時期に集中しているのは何か縁があるなと思いました。

フィクションではどう調理するかによって大化けするループという題材に復讐を組み合わせ、その世界から抜け出せないというこれまた奇をてらった設定に惹かれました。
その設定をフル全開で活かしており、独自の世界観が構築されていてとても面白かったです。前作同様、少し雑なところもありましたが、90分少々なので集中して観れて色々と驚かされながら楽しめました。

恋人を殺された復讐プログラムの"ペナルティループ"で加害者に何度でも死刑をという、現実でも一回の死刑なんかじゃ足りないというフレーズを聞いたことがあるので、それを実際にやってみたらこうなるという現実のifを体験できる映画という点も面白かったです。

ターゲットを最初は毒か薬かで苦しめた後は滅多刺しにしたり首を絞めてみたりと物理で行動していく中で、自分はもちろん、ターゲットも何回も殺されていることに違和感を覚えてきて殺されないように気をつけ出したり、反抗してみたりと、互いがループゾーンに入った事を理解して拮抗している絵面はなぜか笑えるものになっていました。
ボウリング場での攻防なんて、完全に操られてターゲットを殺してますし、ボウリングのピンってあんなにデカいんじゃそりゃ殺傷能力も抜群だよなと思いました。

徐々に互いのことを知っていって、殺すのは仕方ないからといって飄々と殺したり、一緒に出かけたり、殺される準備をしたりと、ユーモア溢れるシーンになっているのは不思議な構図でした。
最後の殺しのシーンなんかは切なさもあって、若葉さんと伊勢谷さんの緩さとピリッとした二つの雰囲気の融合の演技が面白さに繋がっていました。

VRという現実とはまた違う世界で、コントロール下に置かれながらの復讐という二重構造、三重構造と入り組んだ設定でしたが、割とそこはやんわりあっさり触れる程度でしたが、そこを深掘っていくと更に大変になりそうなので、これはこれで良かったのかもしれません。

人物同士の関係性があまり描かれないのは今作の不満点で、特に主人公と恋人との関係性がなんだか有耶無耶かつどうしてその関係性になったのかは全く分からずじまいで、彼女がなぜ追われているのかも最後まではっきりせずだったのが残念でした。

終盤だけとっ散らかっていて尚且つよく分からない終わり方をしてしまったのは惜しいなと思いました。全体的に雰囲気重視で説明は少ない作品なので仕方ないっちゃ仕方ないとは思うんですが、しっかりとオチをつけてほしかったなと思いました。

土台作りが抜群に上手く、本編もクセはありつつも楽しめる、荒木監督のアイデアを生み出す脳をこれからも色んな作品で活かしていってほしいなと思いました。
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