TakedaKatsuya

コロニアの子供たちのTakedaKatsuyaのネタバレレビュー・内容・結末

コロニアの子供たち(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

かつてチリにあったドイツ人入植地「コロニア・ディグニダ」。
そこで行われていた虐待と支配の模様をチリ人で歌の勉強のためにコロニアに入植したパブロ少年の視点を中心に淡々と描いた作品。

薄暗くも美しい映像で描かれた残酷な事実は、直接的な描写はなくても時に目を背けたくなるようなものでもあった。

パウルというナチスの残党でもある指導者は、少年愛者でもあり独自の教育のなかでスプリンターという精鋭を囲い込み、性的虐待をしていた。

生まれた頃からコロニアで生活している若者は、その閉鎖性ゆえに街にあるものも知らず(信号機を知らないという描写があった)、また性的な接触について教えられないから愛の方法を知らない。

このコミュニティはパウルが死ぬ2010年まで続いていたというから驚きだ。

パブロ少年は危機を感じ、友人と命がけの脱走を試み、悲劇的なラストシーンへと繋がる。

この構図、昨今のジャニー喜多川の性加害の事件と似ている。
両者の違いは暴力で支配するか、夢の実現というインセンティブで支配するかだ。
ここで描かれていた子供を支配していくことの卑劣さは、まさに今問題になっていることを考える材料になる。

この映画はコロニア・ディグニダで行われた事実を伝えるものであると同時に、人間を支配していく構造の気持ち悪さを心に残してくれる。