masat

さよならエリュマントスのmasatのレビュー・感想・評価

さよならエリュマントス(2023年製作の映画)
2.0
チアリーダーじゃない地下アイドルのチアリーダー的闘魂の“ある瞬間”ある時期の話。

天才・大野大輔は、どんどん普通になるなあ。
社会をdisりながら、見事に並走し、その時代を、空気を、問題を、映画的に、まるでニューヨーク派の監督の様に、小粋に会話で推していき、日本的な泥臭さも塗れさせ、歪な塊を魅せてくれていた。
あのエッジが失われつつあり、物足りない。
『アストラル・アブノーマル鈴木さん』の凄さや、『ジュバック』における“呪怨”などのホラーを本気でdisりながら、恐怖と奇怪な世界を打ち出そうとした野心など、斜めから社会と人間へと斬り込もうとする。さらにカメラやフレームの、なんとも観る者を小馬鹿にした迫力など、枚挙に遑が無い。
前作『辻占恋慕』も、それほど突飛ではない、寧ろ普通な展開ながら、最後に(自ら)ぶち壊す、その気概は必見の瞬間だった。

本作は、トップシーンからタイトルまで、なんとも気を持たせる“不穏”な雰囲気と展開で、どこに向かっているか解らない、そんな凄みがあった。ただ、それ以降がハッとする瞬間がないのが残念だ。

埼玉なんとか映画祭で鑑賞。
masat

masat