しあつん

乱れるのしあつんのレビュー・感想・評価

乱れる(1964年製作の映画)
4.0
・まさにタイトル通り「乱れる」。最初から緊張感があり、登場人物の辿る運命が気になり見入ってしまいながら、観客の期待をガラッと裏切ってきた。

・戦争により夫を失い、スーパーの台頭が商店の経営に影響するなど商業事情が厳しい中、周囲の人間に寄りかかられ、その中で自分の足で立っていく真面目女。そしてそんな真面目人間に惹かれてしまった年下の不真面目男の物語。

・二人は不真面目と真面目という二項対立では一見正反対の性向だが、それらは表裏一体で、本来ならソウルメイトなのであろうが、一つにはなれなかった。自分の中にルールを課す人間は、ルール以外のものを設定して境界線を作っているので、それを逸脱するものを理解できる。しかし、自分自身がそのルールを逸脱することはきっと至難の業なのだ。最後の礼子の表情からの「終」にびっくりして文字通り鳥肌が立ち、モヤモヤが止まらない。

・卵のシーンなど若干のユーモアもあり。オープニングを中心に、劇伴もパンチがあってよい。草笛光子の声が綺麗。加山雄三は、映像であまりきちんと見たことがなかったものの、さすがに乱されてしまうほどかっこいいと思ったが「?」の疑問形のセリフがえてして棒読みで、少々不自然。

・電話シーンでは、遠くにいる通話相手の姿を途中まで映して、途中からは映さないなどの工夫がよかった。
しあつん

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