五月王

乱れるの五月王のレビュー・感想・評価

乱れる(1964年製作の映画)
4.0
戦争未亡人が婚家の酒屋をひとりで復興させたが、スーパーへの改装話を機に嫁に出した義妹たちに疎まれる
一方跡取の義弟はこの姉をずっと恋慕し、ついに想いを告白してしまう
いたたまれず実家に帰る姉を、義弟は追う

前半はスーパーに押されていく商店街の日常を背景に、酒屋一家の生活が丹念に描かれる
それが、山形行きの帰郷列車の場面から、乗り合わせた二人の気持ちの揺れにどんどんズームアップしていく
途中下車した先の温泉宿でクライマックスを迎え、衝撃のラストへ突き進んでいく

確かに名作だ
すっきりした戦後の風景、広い空、懐かしい建物
自分の子供時代を思い出す空気感は郷愁を誘う
昭和の生活実感は、今にして見るとたまらなく懐かしい
そんなカメラもいい
有名な列車のシーンなど、もう言い尽くされているのだろう

ただ、僕が思い出していたのは、夏目漱石のことだ
具体的にどの作品ということではないが、日常に潜む不安が非日常的破滅へ向かていくベクトル、力の方向に共通するものを感じたのだ

成瀬作品は初めてだったが、他のも見てみようと思う
五月王

五月王