ノラネコの呑んで観るシネマ

⾼野⾖腐店の春のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

⾼野⾖腐店の春(2023年製作の映画)
4.4
広島県尾道市にある高野豆腐店。
「こうやどうふてん」ではなくて「たかのとうふてん」の頑固オヤジの藤竜也と、バツイチ出戻り娘の麻生久美子に、それぞれの「春」が訪れる。
三原光尋監督だから、俳優たちはベタベタに芝居掛かった昭和テイスト。
でも、大船調を思わせる正統派人情喜劇には、むしろピッタリだ。
娘に再婚して欲しんだけど、いざとなると寂しくてたまらない父の面倒くさい葛藤を軸に、父に対する娘の想いや広島という土地が持つ悲しい歴史が絡む構造。
いい意味で予定調和な展開に終始するが、物語は父娘ツートラックで丁寧に進行され飽きさせない。
不器用すぎる藤竜也が、オヤジ可愛くて素晴らしい。
背景設定はちょい盛り過ぎと思わないでもないけれど、その土地で生きてきた人々を描こうとする熱は伝わってくる。
数々の名作の舞台となった尾道のロケーションも、あくまで日常ベースで魅力的に描写されている。
じんわり来るいい映画です。