こなつ

⾼野⾖腐店の春のこなつのレビュー・感想・評価

⾼野⾖腐店の春(2023年製作の映画)
4.0
ほっこり系のヒューマンドラマが観たくて選んだ作品。評価が良かったので何の情報を持たずに劇場へ。

こうやどうふの専門店の話ではなかった。高野豆腐店って絶対「こうやどうふてん」って読みませんか?

尾道の風情ある町に、高野さんが構える「高野豆腐店」(たかのとうふてん)がある。職人気質の父・辰雄(藤竜也)と明るくて気立ての良い春という名の出戻り娘(麻生久美子)が2人で店を切り盛りしている。

豆腐屋と花屋は、朝が早い商売No.1。いくら豆腐や花が好きでも私には絶対務まりそうにない。豆腐の製造過程がじっくり見れて楽しかった。こだわりの大豆とにがりを入れるタイミング、良質な豆腐が出来る技を知る。父娘がひと仕事終えた後に飲む絞り立ての豆乳がとても美味しそう。

父は娘に幸せになって欲しいと、お節介な近所の人達と縁談話を進めようとするが、娘は自分で好きな人を見付けてくる。こんな男に娘を幸せに出来るのか、、父親は何もかも気に入らない。嫁入り前の娘がいるどこの家庭でも起こりうるひと騒動。

お互いを心から心配している父と娘を藤竜也と麻生久美子が好演。素敵な親子を演じている。豆腐屋や理髪店、街の佇まいは昔ながらという言葉がピッタリの懐かしい昭和の風情。お節介な近所の人達のドタバタにも温かさが滲み出ている。笑いあり、涙ありの人情劇だが、病気を隠す父の姿や2人が親子であることのある秘密が、より父娘の絆を強く感じさせ涙を誘う。

父が病院で知り合った中野ふみえ(中村久美)という女性。辛いことを沢山抱えながらも明るく必死で生きている。父辰雄にとって陽だまりのような彼女が側にいることが微笑ましい。

何て心温まる素敵な作品だろう。心からそう思った。
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