静

駒田蒸留所へようこその静のレビュー・感想・評価

駒田蒸留所へようこそ(2023年製作の映画)
3.7
もしや史上初のウイスキー🥃アニメではないでしょうか。個人的に少し嗜み 気になっていたため上映開始を待っていました。

まず早速 結論から申し上げると、思うところはありますが、キッカケとしては悪くない作品だと思いました。知る機会の少ない蒸留所イメージ、ブレンド研究シーン、提供まで長い根気が必要な大変さの一端を見ることができました。ウイスキーに関わる人・物というだけで些細なことにも興味が湧きます。

そして気になった点としては、全体的に台詞多めで回想イメージはあまりなく 概ね同じ場所での人間模様中心だったため、具体的でメリハリあるアニメシーンが少なく感じたことが惜しかったです。
気の毒すぎる不幸はほどほどに、随所で僅かに上がった良い話題を より豊富かつ繊細なアニメーションで表現いただきたかったです。

例えば、前担当ヤスモトの経験や記憶。北海道から取り寄せ3年以上もかけて造る樽。取材先のテイスティングノート。各蒸留所の土地・水・製法の違い・こだわりとその理由。世界中から集まった素晴らしいサンプルの想いや背景など、もっと少しでも広げてほしかった絵の話題が多くありました。

他にも🥃や樽の種類・味・飲み方・世界とジャパニーズウイスキーの歴史と人気・なぜ愛され魅力があるか等が、この貴重な機会により詳しく伝われば さらに楽しかったと思います。

そして話は変わりますが、作中では前半から主人公タカハシの行動や発言に驚かされ続けましたが、最初は同情しました。
もし仮に 私が彼の上司であれば、遅くとも1〜2週間前には休日出勤の打診をし、まだ何も知らない部下と共にオーセンティックバーで実際に飲み、1on1で直接 資料説明と引き継ぎを行った上で、思い入れのあるクライアントに紹介するでしょう。
とはいえその後は閉口もので、トモコの反応は至極真っ当でしたし、ルイの対応は大人で 終始頑張っていて偉いなと思いました。

他にも分かりづらく腑に落ちない点など幾つかありましたが、所々の音楽は良く ラストは少し感動しました。ですので 約90分間、そう踏まえつつ気軽に観てみるぐらいがちょうど良い作品ではないでしょうか。

P.S.
映画のモデルや監修にもなった富山 若鶴酒造 三郎丸蒸留所が、実際 作中にもあった幻のウイスキーを同様の方法で再現し作り出すという試みの公式クラウドファウンディングが立ち上がっていました。
作品とリンクするリアルな背景についても軽く書かれており参考になります。昔に比べ 国内蒸留所は10倍にも増え、より世界的な人気酒となっているのですね。
https://camp-fire.jp/projects/view/651044

またさらに興味を持たれた方は『ウイスキーガロア』という専門雑誌があるので、バックナンバーにある世界中の写真表紙を眺めるだけでもイメージが湧いてオススメです。Sold Outの刊もあるので、もしKindle Unlimited化されたら読破してみたいですね。
https://scotchclub.org/wg_backnumber/
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