ハル

駒田蒸留所へようこそのハルのレビュー・感想・評価

駒田蒸留所へようこそ(2023年製作の映画)
4.1
手放しに称賛できるアニメ作品、実に素晴らしかった。
お酒について豊かに学ぶ時間。
作画、声優、そして仕事に対する真摯な姿。
そのどれもがEXCELLENT!
特に秀逸なのは“嫌な人が誰も出てこない事”
これに尽きる。

ボクは普段お酒を飲まないため、“蒸留所”と“醸造所”の違いもわからないほどの浅慮な知識しか持ち合わせていないけど、むしろそれがピタリとハマった。
というのも本作はお酒について無知な若手記者の高橋が『駒田蒸留所』の駒田琉生社長の教えを請いながらウイスキーの記事を作るストーリー。
彼が1から学ぶのと同様、こちらも鑑賞しながら学べる素敵な映画体験。
高橋の感情にシンクロしつつ、リアルな質感、お酒という嗜好品の奥深さに感銘を受けた。

駒田蒸留所は3代続く伝統ある蒸留所。
琉生は亡き父親から会社を継いだ新米の女社長であり、地震により失われた『独楽』という幻のウイスキーを復活させたい思いで一心不乱に頑張り続けている。
その姿は聡明かつ、ひたむきそのもの。
25歳にして4回転職しているダメダメ高橋も頑張り屋の琉生と関わることで、主体的に行動するよう変わっていく。

新人記者とまだ20代の新米社長が互いに刺激を与えつつ、共に成長していくストーリー。
その過程に共感の気持ちが生まれ、失敗と小さな成功を繰り返しながら歩みを進める二人を見ていると、応援の気持ちが溢れていた。
社会人初期に反芻した初心の大切さが蘇る瞬間。
失敗は成功のもと。
地道にコツコツ、折れずにコツコツ、誠実にやり続けることが何よりも大切だね。

また、実際の蒸留所がいくつも協賛しているため、知識面も充実。
原酒の仕組みやウイスキーが生まれる過程、初心者には目からウロコな話ばかり。
加えて、お酒をビジネスとして成立させることの難しさや、一つのヒット商品を作るまでの果てなき長い道のりに「なるほど、これは大変だ…」と、自然と声が漏れてしまう。
10年にも渡る長い年月、粛々と醸成させる日々。
旨い酒が完成するわけだ。

実にシンプルな王道オブ王道なお仕事&家族ムービー。
家族、恋人、お一人様観賞とあらゆる層にオススメできるユーザビリティに優れた、優しきアニメ映画。
鑑賞後は映画館近くのBarで一杯呑みたくなるはずです!
ボクも今年の忘年会で初のウイスキーにチャレンジしてみようかな。
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