滝井椎野

駒田蒸留所へようこその滝井椎野のレビュー・感想・評価

駒田蒸留所へようこそ(2023年製作の映画)
4.3
現実のままならなさと、諦めずに進んだ先に明るい未来を掴む内容は、まさにお仕事シリーズ。
丁寧な作画や描写にウイスキーが飲みたくなる。
観終えたあとは実に清々しい気持ちで明日からも頑張ろうと思えた。

蒸留所の経営に悩みながら失われたウイスキーを復活させようと奮闘する琉生と、仕事に情熱を持てない高橋のストーリーを軸に話が進む本作。
蒸留所とウイスキーの復活=家族の絆の再生である琉生の物語には感動した。特に、駒田家父の残したノートを元に兄妹の共同作業でウイスキー作り上げ、それを口にした母の幸せそうな顔をもって完成とする一連の流れはベタながらも目頭が熱くなった。
また、はじめは実にいけ好かないキャラである高橋の、誰しもが仕事に対して悩みを抱えながらもそれを飲み込みちょっとした情熱を見つけて生きているのに気づき成長していく姿に、自分も負けてられないな……と励まされたような気がする。

何と言っても白眉はウイスキーに纏わる描写の素晴らしさ。
製造過程はくどくならない程度に丁寧に描かれ、なんとなく造詣が深まったような気になった。
香りが漂ってきそうなウイスキーの美しさに魅せられ、それを味わうキャラクター達の幸せそうな顔に、ついつい帰り道普段買わないようなウイスキーを買って帰った。

『花咲くいろは』に始まるこのお仕事シリーズ、何でも思い通りにいかない現実につい胃が痛くなる展開もあるが、最終的にどの作品も観て良かったと思える。
今年、ぼんぼり祭に行かせてもらった程には個人的に思い入れのあるシリーズであり、ぜひ今後とも続けていって欲しい。
滝井椎野

滝井椎野