みとも

NANA2のみとものレビュー・感想・評価

NANA2(2006年製作の映画)
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 登場人物やその家の場面に生活感が希薄で、音楽観も抽象的。このバンドは「デビューして売れたい」という成り上がり欲だけがあり(それはそれでリアルな動機なのかもしれないが)音楽が好きだという感じがしない。人や生活、音楽の〈描写〉ではなくあくまでもキャラクターの〈内面〉に重点を置いているのだとしても、その内面を描く道具がいずれも記号的な断片ばかりで乏しい。抽象性、キャラクターの受動性の中で内面だけが拡大する。
 抽象性や乏しさを批判しているのではないし(演技は稚拙でカメラワークや編集も陳腐だと思ったが、自分は作り手ではないので作り手目線に立ったことを述べても仕方がない)、主人公二人の主体性の無さを自分が問えばマンスプレニングっぽくなってしまうので憚られる。だが、受動的であり続けた結果としての妊娠を知った後に初めて主体的に選択する「生む決意」が、ここから抜け出すための唯一の道なのだろうか。人の価値はそれだけではない、どころかそこには無いとすら自分は思います。
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